心理学者のダニエル・ゴールマンは、
“Emotional Intelligence” (邦訳『EQ こころの知能指数』)という著作の中でこう言います。
「心理学者であるのは、自らの研究分野である心理学には公然の秘密がある」
公然の秘密とはなんぞや。こんな事実があると。
「学校のテスト、知能指数、SAT(大学進学適性試験)など広く世間で信用されている評価基準は、人生における成功度の予言としてはあまり当てはまらない。」
さらにこんな付け足し。
「たしかに、大きなグループ全体として見れば、IQと生活水準のあいだには相関関係は存在する。IQの高い人々の多くは高給取りになっている。けれども、例外なくそうなるわけではない。人生での成功度とIQとの相関関係には例外がある。例外の方が多いくらいだ。人生を成功に導く要因のうち、IQが関係するのは多く見積もってもせいぜい20%どまりだろう。」
もちろん分野によってで違うこともあるだろうけど。20%。たしかに冷静に見回してみて成功者と言われている人ってそんなもん。
ここで考えてほしいこと。
例えば、たいてい親はわが子を「成功者」にしたいと思っている。だからこそ、勉強をいっぱいさせて「頭の良い子になること」「成績が良くなること」を望む。例えば、「自分の人生に対する満足」とか「友だちや家族などの人間関係」とかよりも。
なぜ、わが子の教育となると「頭がよくなること」だけに必死になってしまうのか。
「ある人間が社会でどのような地位に落ち着くかは、社会階級から運不運にいたるまで、およそIQとは無関係な要因であらかた決まってしまうものだ。」
↑これ読んでどう思う?
え、成功は偶然なの?運なの?努力しても意味がない??教育ってなんの為なの?
どんな力が成功者となるために必要なのでしょ?
自分の人生に満足し、幸せを感じる人生を送るために、どんな力が必要なの?
教育とは、子どもたちにどんなことを教えてどんな力をつけることなの?
ゴールマンは、「こころの知能指数(EQ)」が必要であるとしています。
「こころの知能指数(EQ)」って、
- 自分自身を動機づけ、挫折してもしぶとく頑張れる能力のこと。
- 衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力のこと。
- 自分の気持ちをうまく整え、感情の乱れに思考力を阻害されない能力のこと。
- 他人に共感でき、希望を維持できる能力のこと。
これらの能力であるEQが、IQと同等あるいはそれ以上に、人生を生きる間に生じてくる個人格差を生み出しているって。
ハーバード大学教育学部の心理学者ハワード・ガードナーはこう言っている。
「そろそろ才能というものをもっと広範囲にとらえるべき時期にきていると思います。
子どもの発達のために、教育がなしうる唯一最大の貢献は、その子が自分の才能に最もふさわしい方面に進んで能力を発揮し満足して生きられるよう応援してあげることです。」
「私たちは現在、そのことが見えなくなっています。今の学校教育は、生徒全員を大学教授に仕立てようとするかのような内容です。そして、そのような狭い基準に負うかどうかだけですべての学生を評価しています。」
「学校はいいかげんに子どもをランク付けするのをやめて、子どもたちがそれぞれに持って生まれた才能や資質を見つけ、それを伸ばしてやることに力を注ぐべきです。成功にいたる道は何百何千とあるのだし、そのために役立つ能力だって実に多種多様なのですから。」
これって子どもの教育だけじゃなく、大人もおんなじだよね。
自分をランク付けしたり、相手をランク付けしたり。そんなことじゃなくて。
どうやって、どんなふうに生きていくことが「自分の幸せ度」が上がるんだろう。
そういうことを考えることの方がうんと大切。
その為にどうしたらいいかを考えたり、話したり、行動したりする。
学校や会社、組織や団体だったりする、いわゆる「枠組み」の中から自分を当てはめ考えるのではなく、
自分という枠組みをどうやって作っていくのか。そこまずありきなのだ。
「人生には、成功も失敗もない。」ってよく私の親友経営者が言うんだけど。
きっとそれは、「成功も失敗も、すべての判断は自分で決められる。」ってこと。
そして明らかなことは、「あきらめたら終わり」ってこと。