
フロー状態に入ることは、成長には必要不可欠で幸せを感じる秘訣という話の続きです。
ここでは、子どもにとってのフロー状態の必要性を書きたいと思います。子どもの成長や幸せにも『フロー状態』が非常に大切で、教育においても何より優先すべきことではないでしょうか。
ハーバード大学心理学者ハワード・ガードナーさんは、「フロー」を最も健全な教育の方法だと評価しています。
子どもを育てている現場(家庭や教育機関)で、やりがちな教育の方法として
このような「脅し」や「条件付け」を頻繁に使っていませんか?
「脅し」や「条件付け」は、使っている大人側にとって言う事をきかせる為には非常に手っ取り早い方法です。又、外側からの強制力で何かをやらせるということは、集団をコントロールする側にとって非常に負荷が軽いというものあります。
しかし、このようなことを子どもに対して続けていくと、子どもにとっては、無理矢理やらされているという感覚しか残りません。
そして、大人側の強制する力が働かなくなった時、反抗や反発、無気力や学力の低下という形で、非効率且つ無価値なことをしてきたことに大人側が気付かされる時がやってきます。
何より、その子にとってその後の人生に苦労を強いることになります。非常に可哀想なことです。
「フロー状態」から始める教育は、子ども自身の内面から動機付ける方法であり、子どもの自分からやりたい、から始めていくので、無理矢理言われたからやるというのとスタート地点が異なります。ここに意味があります。
ガードナーさんはこう提言しています。
「私たちは子どもの積極的な状態を利用して、それぞれの子が自分に向いている分野で学習に熱中するように導いてやらなくてはなりません。」
「フロー状態」は、『子どもが、自分に向いた課題に、熱中して取り組んでいるときにあらわれる』ということ。それは、『自分の好きなことを見つけて、自らが努力する』ことだそうです。この経験こそが、「努力する」ということを学ぶ本質だと思うのです。
例えば、子どもが学校でけんかしたりふざけたりする時、ケンカやふざけることが心の底から好きでしているかというとそうではなく、多くは、退屈であったり、力を持て余しているからなんです。
もしくは、自分が与えらている課題が難しすぎて不安な時や、授業がつまらない、やれることがない、情緒不安定、などが原因です。
気づくべきことは、何か興味を持てる対象があり、それに取り組むこと自体が楽しくて仕方がないと思える時には、放っておいても言われなくても子どもはやります。そういうことを知っている子どもは、勉強が好きですし、学ぶこと自体を楽しんでいます。それが成長です。
親や先生など分かっていない大人たちがよく言う事があります。
「我慢しなさい」
「我慢を覚えなさい」
「きちんと我慢して座って勉強することが大切です」
我慢することの意味を本当に分かっているのでしょうか?
「退屈なつまらない授業を、終わるまで、じっと座って待っている」ことが、我慢や忍耐力が付くことなのでしょうか?
我慢を覚えるとは、その子自身が面白いと思えたり感じていることに取り組んでいる時、その過程において待つ必要があるシーンに、きちんと待つ、その先に本当に面白い経験が得られた、ということの経験です。
そこから、我慢をすることが必要だという我慢の意味や価値を体で感じていきます。この体感の積み重ねがあってはじめて、我慢を覚えていき、忍耐力が養われていく、というのが本来の我慢を覚えることの道筋です。
ガードナーさんは、「知性の多重性理論」という理論を展開したことでも有名で、この理論に基づいた学校もあるそうなのですが、その学校は、下記のような方針を掲げています。
音楽や体を動かすことの才能に恵まれている児童は、他の分野よりもこの分野で「フロー」を経験しやすい。だから、そういう児童の特性をわかっていることで、教師は「教育テーマ」の出し方を、その子の興味に合わせて微調整する。
補習から難問にいたるまで、その子に最適なレベルの課題を与えていく。そうすると、「勉強は恐ろしいものでもなく、退屈なものでもなく、楽しいもの」になっていく。その楽しさから、「フロー状態」を体験することになって、新しいことにも挑戦しようとする意欲が生まれる。
今の日本では、「学校教育」に組み込まれ始めると『フロー経験』をすることがなくなっていくことの方が多いのではないでしょうか。それは、多くの授業が、子ども主体じゃなくて、大人からの押し付けや都合や作り上げられたプログラムの遵守の方が優先されているからです。
『フロー経験』を目指す教育とは、人間の本能である「情動」を活用し、より人間的でより自然で効果的な方法を採っています。
教育とは、教えるのではなく、学ばせる機会をつくること。学力ではなく、能力を育てること。自分の価値を認められる高い人間性を育てること。そんな前提にたった、教育内容と方法の見直しのヒントに、このフロー経験という概念を取り入れてほしいと願います。
EQの提案者であるゴールマンさんも、この様に言っています。
「情動をコンロトールし、欲求の充足を我慢する能力も、自分の感情を思考の妨げでなく助けになるよう調整する能力も、目標から後退した時に自分を励まし耐えて挑戦し続ける能力も、自分自身を「フロー」状態へ導く方法を見つけて才能の向上を目指す能力も、すべて人間の努力を実りある方向へ導いていく情動のパワーを物語っている。」
本能である「情動」を、その子の求める目標に向けて活用する力を身につけることこそが、才能の総元締めになるということだと思います。
もしも、あなたが自分の子どもを「天才」や「新しい時代のリーダー」や「幸せを感じる力をしっかりと持った子」に育ててあげたいと願っていたら、ぜひ「情動」をうまく使い、その子のもっているその子らしい才能を『フロー状態』に導いてあげてほしいのです。それが大人の子どもに対する役割ではないでしょうか。