昨日、50代で視力のほとんどを失った染織家・浅野麻理さんという方にお会いしお話を聴く機会がありました。
浅野麻理さんは、画家のご両親の元に生まれ、20年にわたり染色家としてご活躍されていらっしゃったそうです。しかし、進行性の視覚障がいにより、視力は低下、色の世界を奪われ、今はほとんど見えない状態。原因は、膜色素変性症という難病で、急激に視力が低下し、治療法も今の医学ではないと言われたそうです。
染織家として活躍されていた浅野さんにとって、「みえなくなる」ということは、どれほどの苦しみや絶望だったのだろう。そんな気持ちになったのですが・・・。
浅野さんの横には、しっぽをずーっとふりふりしている、黒いラブラドルレトリバーがいました。盲導犬です。
名前は、フリルちゃん。ハーネスを外している時は、リラックスモードの時のようで、大きく太いしっぽを本当にびゅんびゅんと大きくふって、目をクリクリさせ見つめながら、そばに来るフリルちゃんは、「こんにちは、会えてうれしいよ!」と言ってくれているようで、本当にとってもとっても愛おしい姿に、笑顔にならずにはいられませんでした。
盲導犬と初めて接する私に、浅野さんはこう教えてくれました。盲導犬のハーネスは「お仕事のしるし」で、ハネースを付けている時は、視覚障がいの命を預かる役割をはたしている時。だから、「触らない」「声をかけない」「食べ物を与えない」「目を見つめない」、この4つがお約束です。
そして、もっとすごいお話をしてくれました。2007年からフリルちゃんと共に歩んでこられた浅野さんは、少しでも見えるうちにと、フリルちゃんを連れ沖縄をはじめ、セブ、ハワイ、フロリダなど、世界中の海で一緒にダイビングもしてきたと。
そして、浅野さんはこうおっしゃっています。
「見えない明日より、今日を楽しむ、今を生きることが本当に大切だと思っています。」
「私たちのような難病をもっている人間にとって、明日があるさ、ではなく、明日はないさと詩って、今を思いっきり楽しむんです。」
盲導犬フリルちゃんと、浅野さんの体験は、はまのゆかさんのイラストで絵本になっています。
「もうどうけん ふりふりとまり」作セア まり イラストはまの ゆか
そんな本当に素敵な浅野麻理さんとフリルちゃんのエピソードがつまった本。視覚障がいの方のためにと、音声でも聞けるCDも付いています。
「ふりふりが空から降りてきた」 著セア まり
最後にこんなお話もしてくださいました。「目はみえなくなったけれど、フリルとの出会いで、フリルを通じてたくさんの人たちと出会えたり、仲間ができたり、優しいひとたちがふえたり、人の心が柔らかくすることができるようになった。本当に有り難いことです。」
皆さんも、是非ぜひ、読んで頂きたい絵本と本です。