安定した愛着は、情動的同調を伴って養育されるときに発達すると言われています。
同調は、赤ちゃんと養育者の間における相互的な身体的な次元から始まります。
例えば、赤ちゃんに向かって微笑みかければ、それを真似して微笑み返したり、手をあげてみれば同じように手をあげて見せるなどですね。
身体的な動きを真似することで、自分は相手にされ、理解されているという感じを赤ちゃんに与えることができます。
愛着研究者のコールウィン・トレヴァーセンという学者さんはこう述べています。
脳の体の各部を協調させ、リズミカルな動きをとらせ、他者の脳と一致して振る舞うように導く。赤ん坊は誕生以前からすでに、母親が話すのを聞いて、音楽性を学ぶ
また赤ちゃんと養育者が情動の次元で同調しているときには身体的にも同調していることを示しています。
赤ちゃんのときは、自分の情動的状態を調節することができません。なので、子どもが養育者と同調しているときには、喜びとつながりの感覚が、安定した呼吸やストレスを低く保ってくれるそうです。
ここで重要なことは、赤ちゃんである時代(大人でもまだ何かの能力を獲得する前の状態とイコールだと思うのですが)には、赤ちゃんが自分でできるようになる前に、親がまずやってみせてあがることが不可欠です。
何かにおびえたときには、誰かが抱いて、落ち着くまで揺すってくれる。そして、「怖かったね。大丈夫だよ、そばにいるよ」とその不安に同調してあげる。
排泄したら、誰かがきて、きれいにして、おむつを換える。そして、「すっきりしたね、きれいになったね」とその気持ち良さに同調してあげる。
身体感覚と情動(感情)を安全や快適さと結びつけてあげることが、自己調節や自己肯定の土台であることに繰り返し立ち返ることが大切だと思います。
こうして、安定した愛着が形成され、そこを土台に、何が自分の気分をよくさせるのか。何が自分の気分を悪くさせるのかを発見し、学んでいくのですね。
安定した愛着を持つ子ども(大人も)は、自分の感じ方をよく理解し、また他者の反応を自分の行動から変えることがあると理解しています。自分でコントロールできる状況と、助けを必要とする状況の違いもよく理解できています。
また困難な状況に直面したとき、自分への信頼を前提に果たせる役割は何かを考えられます。
ここで不安定な愛着を持った子どもの場合(例えば、虐待やネグレクト、もしくは養育者が不在など)、恐怖を感じても、泣いても、どんなに不安でも、養育者に気づいてはもらえない、無視される、ということを学びます。何を言っても殴られる、怒鳴られる。そこで救いの手が差し伸べられることもなく、その情動(感情)に同調されることもなく…
そういった中でのちの人生で何か困難に直面したとき、諦めるように条件付けられているということに気づいてあげることが重要な鍵となります。