自分のアタマで考える1

by John-Morgan
by John-Morgan

私が小学生だった頃の話。

私の父は、団塊の世代の企業戦士といわれた証券マンだった。

ずいぶんお金儲けをしていた時期もあり、
家だー、土地だー、車だー、ゴルフだー、銀座だー、ハワイだー
といわゆる高度成長期の波にのった生活をしていた。

そういう父の仕事の関係で、
幼い頃から2〜3年に一度は転勤の為に引っ越しをし、小学校も3回転校をした。

小学校時代の記憶といえば、
毎回変わる新しい学校や友だち、生活になじむことで精一杯だった。

4年生になった時、中学受験をすることになった。

転校しても唯一続けていた大好きだったピアノの稽古を辞めた。
代わりに友だちが一人もいない塾に通いはじめた。
家では家庭教師のもとでひたすら勉強にいそしんだ。

中学受験で希望する学校に合格する為には、
「大量の問題を、短い時間で、正確に、求められた方法で、解く力」が求めらる。

だから、算数の問題集を使って勉強するとき、
私は問題をさっと読んだあと、ろくすっぽ考えもせず、すぐに巻末にある解答を見てた。
なぜなら、そこには解法のヒントが載っているから。

最初に、「問題」「解答」「解法のヒント」まで見てしまってから、
「こういう問題は、こうやって解けばいいのね」と理解し、その解法を暗記してた。
そうすれば、似たような問題がテストに出れば、同じ方法で解けばいいからね。

10才だった私にとって「生きる」とは、、
「大量の問題を、短い時間で、正確に、求められた方法で解くことで、いい点数を出す」
ことだとインプットされた。

結果、私は第一希望の学校には落ち、第二希望の学校に合格し入学した。

父には、「バカだからしょうがない」
母には、「大学まである付属の学校だから、これで学校さえ辞めなければ大学まで進学できる」
4つ離れた姉には、「中学から私立に行ってこれで友だちが変わらなくてすむね、あんたはいいね」

と言われたことを今でも記憶してる。

褒められたり、がんばったねと励ましてくれる、そんな家族はいなかった。
みんな自分のことに大忙しなのである。寒々しい小学生とその家族だ。

それから時は経ち、社会人になった。

やりたい仕事なんてなかったから
とりあえず入れる会社でなんとなく働いていた。

社会人7年目を迎えたとき。
父が末期がんだと知らされた。
定年を迎え60才になったばかりだった。
そして、余命宣告をされてからあれよあれよと死んでしまった。

その時、はじめて思った。
シアワセってなんだろう、家族ってなんだろう。

自分のアタマではじめて考えた。

でも答えが出せなかった。

なぜなら、小学生のときに必死でやってきた勉強の方法でテストの点はとれても
「自分の人生」や「シアワセになる」という解法で出すことができない答えを
考える力はまったく身に付いていなかったから。

受験では、問題がなかったはずの、
たとえば、数学の入試問題5問のうち、解法が思い出せた3問だけ解ければ
それで合格するという「大量の問題を、短い時間で、正確に、求められた方法で、解く力」
ではこの問題に手も足も出なかったから。

「自分のアタマで考える」ってむずかしい。。。

たしかに、働きはじめたあと。
現実の社会では、誰かがあらかじめ用意してくれた解法が
存在しない課題がたくさんあると気がついていた。

しかも、「解法を知ろう、解法を勉強しよう、解法を覚えよう」
なんてやっていると、さらに「解法をかんがえる力」がまったく身に付かないことにも気がついた。

そしてようやく私は、
「答えを先に見る」ことをやめた。

最初のうちは、自分の頭で考えれば考えるほど
アホだなーって泣きたくなるくらい幼稚な考えしか浮かばなかった。

考えの深い人とか、博識な人とかが近くにいたりすれば、
もういいから教えてーって叫びたくなったし、事実叫んでいた。

偉大な人たちや専門家の知恵に素直に耳を傾け、
知識としてそれらを学んだ方が「わざわざ自分の頭で考える」より
圧倒的に効率がいいじゃないかと何度も思ったりもした。

でもそこをグッとこらえて自分で考えた。

なぜなら。
「自分の人生」や「シアワセになる」ことって問題は
「自分のアタマで考える」しかないんだってことを身を持って経験したから

「自分のアタマで考える」っていう
とても非効率で、結果がすぐに出なくて、点数を稼ぐには不向きなことが、
「自分らしく生きる」っていうことに必要不可欠なものなのだとようやく気がついたのだった。

つづく

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